記事内容には広告が含まれる場合があります。

【映画視点で考察】FF16(ファイナルファンタジー16)ローブの男の正体・火の召喚獣が2体の理由(ネタバレ解説)

ゲーム

(使用写真:MOVIES & IMAGES(ムービー&イメージ) | FINAL FANTASY XVI (ファイナルファンタジー16)| SQUARE ENIX

今回は、PlayStation5『ファイナルファンタジーXVI(FF16)』(2023)について “映画的視点” から解説・考察します。

追記:2023年9月3日 DLC(ダウンロードコンテンツ=追加エピソード)の開発が正式発表されました。

追記:2023年7月10日 宝塚大劇場・東京宝塚劇場の宙組公演によるミュージカル上演も決定しました。

こちらのブログは現在、執筆途中です。
手元のゲーム進行に合わせて、随時追記していきます。
Xにて「#ユリ16」で検索していただくと、アカウント「@yureeca_」の『FINAL FANTASY XVI』関連ポストがご覧いただけます。

『映画』のように無駄のないシナリオ

はじめに、未プレイの方でもおわかり頂けるように簡単に本作についてご紹介します。

【はじめに】本作の魅力|ストーリー重視のゲーム作品

『ファイナルファンタジーXVI(FF16)』をプレイしてみてまず思ったのは、【キャラクターのバックストーリー】の深さです。
【ストーリー展開】もテンポよく、かつ構成も緻密で、気付けば映画のように観ている自分がいました。

(使用写真:MOVIES & IMAGES(ムービー&イメージ) | FINAL FANTASY XVI (ファイナルファンタジー16)| SQUARE ENIX

グラフィックの美しさも実写レベルで、キャラクターの表情も本物の俳優のように豊か、時に瞳の演技すら見せます。
実写でない分、どのシーンもカットも制作側の狙い通りのアングル、演出となっているので、そういう意味では “完璧な映画” とも言えます。

ひとつひとつの要素のディテールの細かさプロットの緻密さを、このブログでは【ストーリー】に沿ってご紹介していけたらと思います。

【世界観とストーリー】崩壊に直面した「人」の物語

本作の【世界観】はこちらです。

ヴァリスゼア― それは、クリスタルの加護を受けし大地
大地の方々に存在するクリスタルの巨塊「マザークリスタル」。その周囲に満ちるエーテルにより、国は栄え、人々は魔法を使い、安息の中に暮らしていた
各国それぞれが巨大なマザークリスタルを所有することで、ヴァリスゼアの情勢は、危ういながらも均衡が保たれていたのである。
…そう、世界が「黒の一帯」に蝕まれるまでは
(引用:STORY(ストーリー) | FINAL FANTASY XVI (ファイナルファンタジー16)| SQUARE ENIX

わかりやすくまとめると、次のような世界観が【物語のはじまり】(前提)です。

「大きな力」の加護(魔法)が生きる世界
その加護を基盤に、各国の人々は暮らしていた。
「大きな力」の枯渇が始まったとき、人々の暮らしの崩壊が始まる

この「崩壊」を「人=主人公」がどう解決するかが、本作の【ストーリー】です。

【登場人物】主人公は、守るべきものを失った “ナイト”

主人公・クライヴは、ロザリア公国の嫡男(国王の息子です。
しかし、この国には以下の【設定】があります。

・大公家(王家)には、代々フェニックスの力(=火)を持つ者が生まれる(=ドミナント)
↑ロザリア公国=フェニックス(=召喚獣)が守る国

しかし、現大公=クライヴの父(エルウィン)はフェニックスの力を持たないただの人間です。
※「父先代のフェニックスのドミナントが早世したため、大公の座に付いただけ」と作中で言及される。

そんな大公夫妻にとって、第一子であるクライヴは当然、フェニックスの継承を期待される嫡男でした。
しかし、クライヴにはなぜかフェニックスの力が宿らず弟・ジョシュアに継がれます
このためクライヴ(15歳)は大公位継承者から外れ、弟のナイト(騎士)として生きる道を選びます

そして、先述した情勢「大きな力」の枯渇を受け、ロザリア公国も戦争へと舵を切ります。

このとき、立ち寄った(=フェニックスゲート)で奇襲に遭うところから、【クライヴの物語】は始まります

『火の召喚獣』~『不死鳥の雛』:序章【これよりネタバレ】

【冒頭】主人公・クライヴ(28歳)『暗殺任務』から始まります。

しかし、そこは地形が変わるほどの激しい召喚獣バトルの最中。
崩壊に巻き込まれたクライヴは意識を失います
※シヴァ vs タイタン(=鉄王国 vs ダルメキア共和国)←戦争の兵器として召喚獣が使用されている

そして、【13年前=クライヴ(15歳)の回想シーン】が描かれます。

【物語の始まり】フェニックスゲートの奇襲

出陣前に「フェニックスゲート」という砦へ行くのがロザリア公国の習わしです。
このため大公である父と共に、フェニックスの遣い手(=ドミナント)である弟・ジョシュア(=次期大公)も出立します。
このとき、クライヴ弟のナイト(=護衛)として同行します。

【クライヴ(15)のアイデンティティ】
「弟のナイトであること」=弟を守ること

しかしその夜、フェニックスゲートに敵兵(ザンブレク兵※)が奇襲を仕掛けます。
父親を目の前で殺されたジョシュアはフェニックスの力を暴走させます。
(ジョシュアのフェニックス化)

この混乱の中、クライヴは “怪しいローブ姿の男” を目にします
そしてもう一体の火の召喚獣=イフリートが出現し、フェニックスとの激しい戦いを巻き起こします。
フェニックスイフリートどちらも「火の召喚獣」。しかし、この【世界】には『それぞれの召喚獣は1つの属性につき、この世に1体ずつしか存在しない』という【設定】がある。(参照:ファイナルファンタジーXVI – Wikipedia

この “火の召喚獣同士の戦い” は、イフリートの勝利(=フェニックス=ジョシュアの死)で幕を閉じます。
また、この戦いに巻き込まれる形で、自国の兵も敵兵も多くの人が亡くなります
(そして翌朝、クライヴが瓦礫の中から発見されるシーンが描かれる。ここで母親・アナベラの裏切り=売国が発覚する)

【クライヴ(15)のアイデンティティの喪失】
「ジョシュアの死」=弟を守れなかった」& 祖国を攻め滅ぼされる

そして【時制】は再び13年後

気を失っていたクライヴ(28)が目を覚ましたことで【回想】は中断され、
当初の目的であった『召喚獣・シヴァの暗殺任務へとストーリーは進行します。
※正確には『シヴァのドミナント(=シヴァの遣い手)暗殺任務』

『シドという男』:目的は弟の仇討ち

【ここまでの状況】
鉄王国(シヴァ)vs ダルメキア共和国(タイタン)
ザンブレク皇国(バハムート)に属するクライヴ※1
※1 フェニックスゲートの奇襲を契機に祖国・ロザリア公国はザンブレク領となる。クライヴはベアラー兵(魔法を使える奴隷階級の兵士。※2)としてザンブレク皇国=仇の国に酷使されている
ベアラー生まれつき魔法を使える人間のこと。その目印として頬に刻印を入れられる。
※2 クライヴの火の能力は正確には魔法ではなく、弟のジョシュアから授かったもの=フェニックスの祝福
クライヴの『シヴァ(=氷)の暗殺任務』は、シヴァの正体幼馴染・ジルだったことで様相が一変します。

【きっかけ】クライヴの暗殺任務の対象=幼馴染・ジル

暗殺対象=幼馴染・ジルと知ったクライヴは、任務を放棄します。
【冒頭の回想シーン】で描かれるクライヴとジルの関係は恋人未満。城下では輿入れの噂もされている関係。

しかし、そんな勝手が許されるはずもなく、ジル(シヴァのドミナント)を取り戻そうとやってきた鉄王国の兵士、更には暗殺部隊(仲間)と戦闘になります。

意識のないジルを抱え、クライヴは絶体絶命の危機に陥ります
この二人の危機を救う人物が、ラムウ(=雷)のドミナント・シドです。
※シドにクライヴの危機を報せたのが、15歳の頃に可愛がっていた狼・トルガル
(13年ぶりの飼い主との再会。シドに保護されていた)

【クライヴの状況】弟の仇討ち=”炎のドミナント” を追う

シドの信念『ベアラー保護(ドミナントも含む)
どこの国にも属さず、長年、暗躍してきた人物です。
このため、意識のないジルを保護し、それに同行する形でクライヴも “シドの隠れ家” へ向かいます。
※シドの【バックストーリー】:ウォールード王国(オーディン)の元騎士長

このとき、クライヴはいわゆる「脱走兵」の状態です。
頬にベアラーの刻印(=奴隷の印)まで入れられた状態では、遅かれ早かれ捕まってしまいます。

一方で、クライヴにとってこの状況は13年ぶりのチャンスでもあります。
暗殺部隊は仲間同士、裏切り者が出ないよう互いを監視していた。容易に抜けられる状況ではなかった

【クライヴの目的】
弟の仇を見つけて殺す(「仲間が皆死んだ今が最後の機会」)
↑そのためには情報が必要
↓↑
【シドの目的】
ベアラー保護
(「誰もが人として死ねる場所を作りたい」)
↑そのためには腕利きが一人でも多く必要

「火のドミナントを見た者がいる」というシドの一言(情報)で、ひとまずクライヴはシドと手を組みます

クライヴとシド。
「利害の一致」という合理的な理由でのキャラクター合流が、ストーリーを補強します。

『不穏な静寂』~『因果』:弟の死の真相とローブ姿の男の行方

ここでは、シドのエピソードを主軸に、クライヴが自分自身がイフリートだったと気付く(認めるのではなく、あくまで気付く)までの過程が描かれます。


【クライヴの因果】ローブ姿の男は実在する

火のドミナント(=イフリート)を見つけたいクライヴと、ベアラーを保護したいシド
ふたりはロストウィング(ベアラーを保護している村)へ向かいます。

【シドの目的】
俺は、ただ人と同じように死を迎えたいだけなのさ」
↑ロストウィングへの道中にクライブに告げる。シドの当初の目的は、ドミナントもベアラーも「人と同じように死ねる場所を作ること

しかし、ひと足遅く、村はウォールードの兵士(=ベネディクタの密偵部隊)の襲撃に遭った後でした。
救出したシドの仲間・ガブから、クライヴはウォールードの兵士火のドミナント(=ローブ姿の男)を捜していることを知ります。
(→そして “フードの男” はベネディクタらによって捕らえられる

【クライヴの状況】
確かに “ローブ姿の男” は実在することを知る
(ここからプレイヤーも目的を持って “ローブ姿の男” を追うクライヴへの感情移入のはじまり

興味深いのは、ここからすぐにクライヴがベネディクタを追わないところです。
(シドの命令で、ひとまずガブが足取りを追う

シド「一度、ロストウィングへ戻る。村の連中から話を聞こう」
クライヴ「だが、このまま――
シド「奴らはガブに追わせた。あいつは特別鼻が利くんだ。任せとけ」

今すぐ追いたい気持ちのある一方で、クライヴにはベネディクタの行き先がわからないのも本当です。

クライヴの闇雲な行動=RPGの主人公らしいアクションをシドが止める
このことからも、FF16が【ストーリー性】を重視していることがわかります。

そして、クライヴとシドの酒場での会話を通して、重要なキャラクター描写がなされます。

シド「仇を討ったあとはどうする?
クライヴ「13年前、俺は守ると誓った弟目の前で殺された。だからせめてもの手向けとして、奴をこの手で殺す。それ以外のことはどうだっていい
シド「因果か。それがお前の生きる糧か」

【クライヴの状況】
弟の仇討ちのためだけに生きている自分のために生きていない

また、守ると誓った弟目の前で殺された
実は、これは弟・ジョシュアとも重なる状況です。

【13年前のジョシュア】
(クライヴに)守ると誓った父(ザンブレク兵に)目の前で殺された

このことがポイントとなるのはもう少し先のストーリーになるので改めて後述します。

【シドの人物像】元騎士長ゆえの人心掌握術

クライヴは、ガブからノルヴァーン砦(他のベアラーたちと共に)火のドミナントが捕らえられているという情報を得ます。
※監禁場所のノルヴァーン砦はザンブレク皇国の砦だが、ベネディクタ率いるウォールードの密偵部隊によって陥落。このことを「大したもんだ」とシドは褒める)

シド「俺はベアラー※1を救助するお前はドミナント※2を捜せ
※1 ベアラー=生まれつきクリスタルなしで魔法を使える人間。
※2 ドミナント=召喚獣を宿した人間。魔法も使える。

シドは、ガブにも「逃がしたベアラーをこの村まで誘導しろ」と指示を出しますが、ガブは納得しません

ガブ「そっちの新入り(=クライヴ)に任せりゃいいだろ」
シド「お前にしかできないことなんだ」※要約

これに気を良くしたガブは、「迷惑かけんなよ」とクライヴに言い残して去っていきます。
続けてシドは、クライヴをも宥めます

クライヴ「シド、俺たちも(=早く行きたい
シド「いや、まだだ。決行は明日の夜に。今出発しても、着く頃には夜が明けちまう忍び込むには分が悪すぎるお前だってせっかくの機会を反故にしたくはないだろ?」

この【シドの人物像】は、シドがウォールードの元騎士長だったことに直結しています。

騎士長は兵士を束ねる上官です。
冷静な判断的確な指揮、ときには宥めすかしたり教え諭すことも必要【職業】です。
このあたりの【キャラクター造形】の合理性も、FF16の【ストーリー】を下支えしています。

【細かな描写】クライヴ「先に行け」→シド「先に行け」

ロストウィングまでの道中からノルヴァーン砦にかけて、クライヴとシドの微妙な【関係性の変化】が描かれます。

①ロストウィングまでの道中の岩場
クライヴ「先に行け」
クライヴが岩場を押し開き、シドが先に通る
②ノルヴァーン砦の落とし戸
シド「先に行け」
クライヴとシドで押し上げ、クライヴが先に通る

①では一人で道を開きますが、②では二人で道を開きます。
また、①ではクライヴもシドも事務的ですが、②では協力関係に変化しています。

【サイドストーリー①】メティアへの願い・シドとベネディクタ

シドには、ウォールードで騎士長をしていた過去があります。
ロストウィングへの道すがら遭遇するベネディクタウォールードの密偵部隊、つまりは同郷=旧知の相手です。
(恋愛関係にあったことを示唆するような空気感も漂う)
※ウォールード:ヴァリスゼア東方「灰の大陸」を支配する王国(クライヴたちが今いるのは「風の大陸」=別の大陸の国

繰り返し描かれる “月を見上げるベネディクタ”

クライヴとシドがノルヴァーン砦へ向かう間、幾度も【ベネディクタが砦でひとり佇むシーン】が挿入されます
その意味を解くカギは、【クライヴの回想シーン】で描かれた幼馴染・ジルのセリフにあります。

(フェニックスゲートへ発つ前夜・月を見上げるクライヴとジルのシーン)
ジル「願い事?
クライヴ「もうそんな歳じゃないよ」

ジル「(戦へ赴くクライヴを案じて)じゃあ、クライヴたちが無事に帰れるように、メティアにお願いしなきゃ

クライヴたちの【世界】には、「月の隣の赤い星=メティアに願い事をする」風習があります。
※ゲーム内の用語集参照

ベネディクタにも、何か「願い事」があるという描写です。
(だからベネディクタは月を見上げている。クライヴと同じように「もうそんな歳じゃない」とは思いながらも)

ノルヴァーン砦・礼拝堂|ウォールード王・バルナバスの “理想”

シドとベネディクタは、ノルヴァーン砦内の礼拝堂で再び対峙します。

シド「こんな夜更けにお祈りか?」
ベネディクタ「異国の神にすがるほど、私が餓えているように見えるのか
“メティアに祈っていた” からこその尖った反応

ノルヴァーン砦はザンブレク皇国の砦です。つまり、この礼拝堂が祀っている “神”ザンブレク皇国の神ということになります。
(このため、ウォールード王国の兵士であるベネディクタにとっては “異国の神”

ベネディクタ「シド、ウォールードへ戻ってこいバルナバスさま(=ウォールード王国の王に命を救われた恩を忘れたのか」
↑ベネディクタは、バルナバスの命令(「これからの世界に必要になる」)でドミナントを捜している
このためベネディクタは炎のドミナント(=ローブ姿の男)を捕え、シド(=雷のドミナント)を味方に取り戻そうとする

シドはこの誘いを、「(=バルナバス)が高々と掲げる “得体の知れない理想” にだけは踊らされたくない」と断ります。
バルナバスの理想=【目的】が判明するのは【物語終盤】。

シド「俺は奴の奴隷にはならない。お前のようにはな。お前の本当の望みはわからないよ。それでも、いつだったかお前は言った。人として死にたいと。あの言葉だけは真実だと思っている

ノルヴァーン砦での戦闘後|ベネディクタの “自我の在処”

ノルヴァーン砦での戦闘後。
クライヴによって風の力(=ガルーダ)を奪われたベネディクタ錯乱します。
(ここからクライヴはフェニックスだけでなくガルーダの力も扱えるようになる)

ベネディクタ「違う、違う! これは私じゃない……!」

ベネディクタは “ドミナントであること”自分の価値ひいては自我を結びつけていたことがわかる描写です。
(だからバルナバスも重用していた)

ここから「人間の自我」重要なテーマとしてストーリーを引っ張り始めます

ベネディクタの末路|【回想】シドとの出会い

部下たちに連れられ、敗走するベネディクタでしたが、途中、野盗に襲われます
ここで挿入されるのが【ベネディクタの回想】です。

描かれるのは、

ベネディクタ:以前にも似たような窮地に陥り、シドに救われた
ベネディクタの持つペンダントが、このときシドの胸にある=シドからもらったペンダント

たったこれだけの【シーン】です。

しかし、これは誰もが一度はどこかで観たことのある “よくある出会い”=古典的な【バックストーリー】です。
だからこそ【短いシーン】でも十分、ベネディクタの後悔シドの切なさが伝わり、プレイヤーは二人への憐れを抱きます。
それを見越した上での、思い切った【割愛の演出】となっています。

ベネディクタが “信じたかったもの” = “シドの信念”

ベネディクタが最期に思うのは、“シドを信じなかった後悔” です

ここまで何度も先述してきたように、シドの “信じるもの”=”信念” は、「誰もが人として死ねる場所を作ること」です。
そんな「場所」が実現する未来を、ベネディクタは信じられなかった
“信じたかった” からこそ、メティアに祈っていた。そして、“シドの信念”代わりに “バルナバスの理想” を信じた

また、彼女の亡骸を前にシドも独白します。

シド「なぜ、バルナバス(=ウォールード王)を信じた? ベナ……お前の望みじゃないだろう、こんなの……」

力を失ったベネディクタは、我を忘れてガルーダに顕現し、死亡します。
つまり、「召喚獣として死を迎える」
「人として死にたい」という “いつかの彼女の言葉” を知っているからこそ、シドはその死を嘆きます

また、【ここまでのストーリー】では以下のことがすでに描かれてます。

・ジョシュア(=フェニックスのドミナント)…力を持つがゆえの生きづらさを抱えている。
・ジル(=シヴァのドミナント)…兵器として酷使されている。
・ベネディクタ(=ガルーダのドミナント)「人として死にたい」(のに死ねなかった

これらをドミナントの共通項とするなら、
おそらくはそこにシド(=ラムウのドミナント)が祖国を捨てた理由もあります。
※祖国・ウォールードをシドが去った理由については【物語後半】の【サブストーリー】でヒントが描かれます。ここでは割愛します。

以上のように、シドとベネディクタの【サイドストーリー】は、
作品全体のトーン=作品テーマ「自我(信念)」にしっかりと寄り添うものになっています。

【クライヴの自覚】炎のドミナント=自分=イフリート

窮地に陥ったベネディクタは召喚獣・ガルーダに顕現
我を忘れて荒ぶるガルーダを追う最中、クライヴはシドと共に “ローブ姿の男” を目撃します。
(直後、シドとトルガルは障害物によってパーティーから離脱)

追いかけるクライヴでしたが、ガルーダに阻まれ、再び戦闘となります。
このとき、絶体絶命の危機に陥ったクライヴは、「目覚めよ、因果の子」という何者かの呼びかけによって、イフリートに顕現します。

シド「(意識を失ったクライヴを前に)ずっと追ってきた仇が、自分自身だったとは……」

戦いに敗れたベネディクタは死亡クライヴはシドによって隠れ家へと運ばれます。

『重い枷』~『それぞれの想い』:ローブ姿の男は二人いる

ここでは、「自分こそが弟を殺した」と知ったクライヴ(=【目的】の喪失が、もう一度【目的】を見つける(=立ち上がる)までが描かれます。

【クライヴの目的変化】
①弟の仇討ち:『シドという男』~『因果』

罪を知り、真実を求める『重い枷』~『それぞれの想い』

また、「”ローブ姿の男” は二人いる」というトリックが判明する章でもあり、
一人はジョシュア(=フェニックス)、つまり、クライヴの弟の生存プレイヤーに明かされます

【クライヴの目的喪失】弟に生かされた → 弟を殺した

ここまでのクライヴは、

【クライヴの認識①】
弟に生かされただから弟のために仇(=イフリート)を討つ

この想いだけを原動力に、13年もの過酷な日々を生き延びてきました。
しかし、ガルーダ戦をきっかけに、この想いが根底から崩壊します。

【クライヴの認識②】
弟に生かされたと思っていた
↑だが違った。
自分がもう一体の火のドミナント=イフリートだった。
↑=弟を殺したのは自分(=イフリート)
つまり、 “仇=ローブ姿の男” は存在しない

クライヴ(15)にとって自分が自分であるため(自我)に一番重要だったのは、「弟のナイト」であることです。(参照:【物語の始まり】フェニックスゲートの奇襲
そんな彼にとって「弟を殺す」という行為は、自身を全否定する行為に他なりません。

“ローブ姿の男” は、クライヴ(15)の【防衛本能】が見せた妄想と言えます。
※この時点では、です。

【構成のトリック】クライヴに “ローブ姿の男” が見えた理由

クライヴの目撃した “ローブ姿の男”
「彼を追う」という展開のための仕掛け【冒頭の回想シーン】にあります。

①【冒頭】『シヴァ暗殺任務』の最中にクライヴは気を失う
【回想】フェニックスゲートで “ローブ姿の男” を目撃する
③(時制戻って)『シヴァ暗殺任務』へ復帰

②の【回想】は、気絶したクライヴ(28)の視点から見た【あの日の出来事】です。

「”ローブ姿の男” を目撃した」という出来事は、クライヴにとっての事実でしかありません
クライヴ=プレイヤーに見えているものが、マードック将軍等他のキャラクターには見えていない可能性がある)

プレイヤーの視点=「クライヴ」であることを巧みに利用した【トリック】となっています。

【情報整理】”ローブ姿の男” はもう一人いる

自分こそが「弟の仇=イフリート」だったと気付いたクライヴは、自暴自棄に陥ります。
※目覚めた時に牢屋に繋がれていたのは、クライヴが「暴れた」ため。(参考:付近のモブキャラクターのセリフ
↑のようにFF16はモブキャラクターの描写もその都度更新されていきます。(ex.「ジルの着替えを用意してあげよう」という女性のセリフも)

しかし、ここで描かれるのは「状況は待ってくれない」というリアルさです。
クライヴがこうしている間も、シドの仲間・ガブは、クライヴが見た “フードの男” の存在を信じて捜してくれています

【クライヴの後ろ暗さ】
・「自分がイフリートだった」=「ローブ姿の男は実在しない

ここで助けとなるのが、先述した【シドの人物像】です。

シド「お前のためにガブは危ない橋を渡ってる関係ないとは言わせねえぞ

クライヴの後ろ暗さを逆手にとってシドは再び外へと連れ出します
(ガブから火のドミナントに関する報せが来る。そのために合流に向かう)

ザンブレク兵に追われるガブを見つけたクライヴは、間一髪、ガブの命を救います
このことが「救えなかった弟」に固執していたクライヴの心を動かします

そしてクライヴはガブから次の情報を得ます。

【火のドミナントの行方】
・従者とともにロザリア(現在はザンブレク領)に向かっている
・戦い方からして、間違いなく火のドミナントだった。

ローブ姿の男はもういないはずなのにガブは “見た” と証言します。
シドも「フェニックスを殺したのはお前かもしれない」と前置きをした上で、

シド「だがお前は見たはずだ。竜巻にいたローブ姿の奴を。俺もあそこで見てる奴はいたんだよ、クライヴ
※ここでプレイヤーは違和感を覚える。「ローブ姿の男」はクライヴの作った妄想のはずなのに、“どうしてシドにも見えた” のかと。

と証言し、

シド「弟の仇を討つためだけに生きてきたんだろ? だったら自分で真実を掴んでみろそれから死ねばいい

こうしてクライヴは「真実を掴む」ため、再びローブ姿の男を捜し始めます。

【クライヴの新たな目的】←シドによって与えられる【目的】
“もう一人のローブ姿の男” を追う(=真実を求める)

この【シーン】の直後、プレイヤー“フードの男” の一人弟・ジョシュアであることを、クライヴより先に知ることになります。

【クライヴの前進】ジルの目覚め → 故郷へ

隠れ家へ戻ったクライヴは、目覚めたジルの元へ向かいます。

【ジル → クライヴ】
・「フェニックスゲート襲撃後、まもなく鉄王国が攻めて来た
ロザリア軍は一方的に敗れジルをはじめとした女子供は連れ去られた
・「鉄王国についてすぐにシヴァの力に目覚めた
→ジルは人質を取られ、兵器として生きてきた
【クライヴ → ジル】
・「召喚獣イフリートになって、自分がジョシュアを殺した
・「“ローブ姿の男” を見た
※クライヴは自身の発言をきっかけに、ローブ姿の男に「見つけたぞ」と言われたことを思い出す。
↑”ローブ姿の男” が単なる【防衛本能】なら「見つけたぞ」とは言わない=【伏線】

13年ぶりの再会を果たした二人は、あの日の真実を掴むため、故郷・ロザリア(=フェニックスゲート)と旅立ちます。

【クライヴがこれまで一度もロザリアへ戻らなかった理由】
・ザンブレクのベアラー部隊を抜け出せなかった。
戻るのが怖かった

『望郷』~『生かされた意味』:ローブ姿の男の正体

ここでは、ヴァリスゼアという【世界】の現状(=差別社会)と合わせて、
自身がイフリートであることを知ったクライヴが、その事実(=罪)を許容するまでの過程が描かれます。

【クライヴの目的変化】
①弟の仇討ち:『シドという男』~『因果』

②罪を知り、真実を求める:『重い枷』~『それぞれの想い』

罪を許容し、償いの道を探す『望郷』~『生かされた意味』

【現実①】ベアラー差別(ザンブレク皇国領ロザリア)

ここから【クエスト】(壊れた橋が通れるようになるまでの場繋ぎ)を通して描かれるのが、ベアラー差別の現状です。

頬に刻印のあるクライヴは、側から見れば “ザンブレクのベアラー兵” です。
そんな “ベアラー・クライヴ” に対する人々の態度は尊大で、まるで奴隷のような扱いを受けます。

クライヴたちはシドの仲間・マーサから、次の【現状】を聞かされます。

マーサ「皇都オリフレム(ザンブレクの首都)クリスタル不足に陥っている
↑このためにベアラーの徴収が起きている

そして、ベアラーを産んだ母親がその子を “処理したこと(子供の選別) を平然と話す場面に遭遇します。
マーサたち(=ザンブレク領となったロザリア)にとっては当たり前の光景ですが、
クライヴとジルには到底信じられません
かつてのロザリアはこんなふうではなかった

二人の様子を見たマーサは、現実を見せるために丘の上の修道院へ薬を届けるよう頼みます。
その修道院は余命わずかなベアラーを看取るための施設となっていました。
※捨てられたベアラーをマーサが買い取っている。

ここでクライヴたちは、

【酷使されたベアラーの末路】
①魔法を使うにつれ、体が石化していく
②動けなくなったら捨てられる
痛みに苦しみながら最後には全身が石になって死亡する

この悲惨な【現状】を目の当たりにします。
修道院の院長は、彼らを “人らしく看取る” 役目を担っている)
※実はマーサは、クライヴとジルの素性をシドから聞いて知っている。心から二人の旅の安全を願って見送る。

マーサの宿を出たクライヴとジルは、そこで偶然シドと行き合います。
(ここで、シドも腕から石化が始まっていることが描かれる)
※隠れ家では見送りに現れなかったシド。先廻りをして、マーサに口添えをしてくれていた

シド「過去のお前を、なかったことにするなよ。自分を受け入れてやるんだお前を救えるのは、お前だけなんだから」

修理の済んだ橋を渡って、クライヴとジルは再びフェニックスゲートを目指して北上します。

【クライヴの後悔】罪を犯して生き残った

次の村(=イーストプール)へ立ち寄ったクライヴとジルは、故郷の知人(=マードック将軍の妻)と再会します。
※イーストプールはマードック将軍の故郷。クライヴとジルは「13年間、二人で旅をしていた」と嘘を吐く

アナベラ様(=クライヴの母親)が皇室に入られてから全てが変わった」というマーサの村でも描かれた【ロザリアの現状】と共に、クライヴは13年越しにマードック将軍の死を知ります。(イフリートの炎に焼かれて死んだ犠牲者の一人)

罪悪感に苛まれたクライヴは宿を断り、ジルと共に野宿をします。

【クライヴの状況①】
・弟に生かされたからこそ、弟の仇(=火のドミナント)を追っていた。
↑だが違った。
弟だけでなく、親しい者たちまで殺していた
自分が生きていることに納得できない(=犯したが大き過ぎる)

これに対してジルは、「私も同じ」とシヴァ(=戦争の兵器)として生きてきた13年間を悔い、クライヴと再会した戦場で死ぬつもりでいたことを打ち明けます。

・クライヴもジルも “大きな罪” の上に生きている
二人の絆の理由=かつての恋愛感情だけではない
ジル「あのとき※1 メティア※2 にかけた願いは叶った。あなたは生きているそれにはきっと意味があるのよ
※1 フェニックスゲートへ出立する前の晩。ジルはクライヴの無事の帰還をメティアに祈っていた
※2 参照:【サイドストーリー】メティアへの願い・シドとベネディクタ
【クライヴの状況②】
ジルの言葉どうにか自分を保っている

【クライヴの衣装】「ザンブレク兵」→「父親」へ

翌朝、クライヴはマードック将軍の妻から、父・エルウィンが若い頃に着ていた衣装を譲り受けます

【クライヴの姿】
①ザンブレクのベアラー兵 → ②若かりし頃の父

そしてフェニックスゲートへ向けて、再び出立します。
※この直前に、この村がロズフィールド大公家(=クライヴの一族)のベアラーを保護している(“大公派” の村と呼ばれている)ことに関する【クエスト】が発生しますが、これについては後述します。

【クライヴの許容】「罪を背負って生きる」→「償い」へ

フェニックスゲートに到着したクライヴとジルは、“ローブ姿の男” が遺跡の中へ入って行くのを目撃します。

追いかけた先には、本来、フェニックスのドミナントにしか開けられない扉がありました。
しかし、クライヴには弟・ジョシュアから授かった “フェニックスの祝福” があるため、扉を開くことができました。

そうしてクライヴとジルは、遺物との戦いの末、遺跡の最奥(=天啓の間)に辿り着きます。
そこで対峙するのが “ローブ姿の男” です。

ローブ姿の男「我は汝だ
ローブの下の顔=クライヴ

ひとり別の空間へと移されたクライヴは、そこであの日(=フェニックスゲート襲撃の夜)を追体験します

【クライヴの許容の過程】
①イフリート(=自分)フェニックス(=弟・ジョシュア)を殺したことを再認識する
②弟に守れなかったことを謝罪する
③「ジョシュアは死んだ。俺が殺した」と言葉では言っていても、本当には認められていなかった
④認めることで、「思い出」まで失うことが怖かった

↓つまり、

クライヴ「俺は、自分から逃げていたんだ
※”ローブ姿の男” はクライヴの【防衛本能≒逃走本能】が無意識に生み出した存在(参考:【クライヴの目的喪失】弟に生かされた → 弟を殺した

クライヴは「真実を知ることがジョシュアへのせめてもの償い」という【答え】に至ります。
そして、「そのために自分を受け入れて前へ進む!」とイフリート(=自分)との戦闘に突入します。

【クライヴの出した答え】
後悔・罪悪感 → 贖罪(償い)
※ここで活きるのがシドのセリフ。「過去のお前を、なかったことにするなよ。自分を受け入れてやるんだお前を救えるのは、お前だけなんだから【世界の現状】ザンブレク皇国領ロザリア・ベアラー差別より)

クライヴ「お前は俺だ
↑ローブ姿の男「我は汝だ」を受けてのセリフ

こうしてクライヴはイフリート(=自分との戦い)に勝利
フェニックスの能力(=ジョシュアの “祝福” による魔法能力)と合わせて、イフリートの能力も使えるようになります。

しかし、【物語の始まり】フェニックスゲートの奇襲で先述したように、この【世界】には【重要な設定】があります。

「それぞれの召喚獣1つの属性につき、この世に1体ずつしか存在しない」とされている。
(引用ファイナルファンタジーXVI – Wikipedia
クライヴ「なぜ火の召喚獣が二体もいるのかなぜそれが俺に宿ったのか消えたローブ姿の男が何者なのか真実が知りたい。俺が生かされた意味が、そこにあると思う」
→つまり、クライヴが求めているのは「真実①②③「生きる理由」

フェニックスゲート襲撃の夜。
クライヴのイフリート化によって、多くの人々の人生が狂いました。

罪を償わなければならないクライヴを支えるのは、ここでもジルの言葉です。

ジル「償うのは、それから(=真実を知ってから)だって遅くないわ」
※シド「自分で真実を掴んでみろ。それから死ねばいい(参照:【情報整理】”ローブ姿の男” はもう一人いる」と重なるセリフプレイヤーへの念押し

【他視点】フェニックスゲートにいたジョシュア & フーゴの怒り

フェニックスゲートから出てきたクライヴとジルの様子を、陰から見ているのがジョシュアです。

ジョシュア「①あのときの違和感はこれだったのか。②まずい、このままではに……!」

①からわかるのは、ジョシュアも同時刻に遺跡内にいたということです。
クライヴとジルが目撃した “ローブ姿の男” =ジョシュア
しかし、そこで何をしていたかはこの時点では不明です。

②は、「クライヴには “見つかってはいけない相手” がいる」という【伏線】ですが、これもこの時点では “奴” が誰かまでは不明です。

そして、【視点】はフーゴ(=ダルメキア王国・タイタンのドミナント)移ります。
描かれるのは、フーゴにベネディクタの首が届く【シーン】です。
※フーゴはベネディクタを自分の恋人だと思っているが、実際はハニートラップ

【ベネディクタの首】
誰が届けたかは不明
↑少なくともクライヴとシドではない。
(ベネディクタの死亡時、シドは亡骸をそのままに、意識を失ったクライヴを隠れ家へ運んでいる)

しかし、この時のフーゴの【リアクション】=「大人しくしていたから見逃してやったものを!」から、首を送りつけた者の【目的】だけは明らかです。

【首を送りつけた “誰か” の目的】
フーゴの怒りを利用して、シドの一派を壊滅させる【伏線】

暗躍している何者かの気配を匂わせて、【ストーリー】は中盤のクライマックスへと進行します。

【クライヴの決意】アナベラの蛮行①・クリスタルの真実

フェニックスゲートから村(=イーストプール)へ戻ったクライヴとジルは、そこで村人の虐殺に遭遇します。
それを指示したのは、ザンブレク皇国の神皇后・アナベラ(=クライヴとジョシュアの母親)です。
※のちに「ザンブレクがロザリアを支配して以来、最悪の事件と称される。

【状況】イーストプールの村人虐殺
【理由】イーストプール=「大公派の暮らす村
この村は亡き大公・エルウィン(=クライヴとジョシュアの父親)を未だに慕っているだけでなく、ロズフィールド大公家(=クライヴの一族)に仕えたベアラーも保護していた。(=フェニックスゲート直前の【クエスト】で言及される)
アナベラ何か【理由】があって元夫を敬愛する人々弑逆した。(自国領にもかかわらず村を粛清している)

アナベラの蛮行を目の当たりにしたクライヴとジルは、再びシドたちと合流※1・2します。
※1 クライヴとジルには「もともと誘われていた」という説得力のある【理由】がある。
※2 この行動からダルメキア(=ベネディクタ殺害に激怒しているフーゴ)に隠れ家が見つかってしまう=【伏線】

「旅の収穫はあったのか?」と問われたクライヴは、シドに次のように答えます。

クライヴ「以前、あんたは言ってたな。“誰もが人として死ねる場所” をつくりたいと。それはきっと―― “人が人として生きられる場所” をつくることなんだろう」

続けて、【クライヴの成長】が彼自身のセリフを通して語られます。

【クライヴの成長①】
クライヴ:復讐のためだけに生きてきた(自分の世界だけで戦っていた=個人規模
現実を知って、
クライヴ:人が人として生きる(死ぬ)ことすら難しい現実に気が付いた=社会規模

クライヴ「気付いたからには、もう見ないふりなんてできない
シド「それは償いのつもりか?」
クライヴ「俺と彼女(=ジル)決意だ」
【クライヴの成長②】
後悔・罪悪感
(参照:【クライヴの後悔】罪を犯して生き残った

償い
(参照:【クライヴの許容】「罪を背負って生きる」→「償い」へ

「決意」

そしてシドから明かされるのが、『クリスタルの真実』です。

シド「マザークリスタル(=風の大陸の中央にある最大のクリスタル)が黒の一帯の原因
→「黒の大地」は、マザークリスタルがエーテルを吸い尽くした結果(=枯渇)

↓簡単に言うと、

・「魔力の尽きたベアラー」=石になる
↑と同じ理屈で、
・「クリスタルに魔力を吸いつくされた大地」=黒の大地になる

また、この【事実】がこれまで公にされなかった理由も、クライヴとシドの会話を通して【説明】されます。

【世界の常識】=【事実の隠蔽】
マザークリスタル=神聖な存在
(だからこそ人は崇め、その加護を巡って争い続けてきた

シド「真実を知られると都合が悪かったんだろうな。「誰が?」とジルに問われて)神様かな?」

【補足】宗教観①|ロザリア公国とザンブレク皇国

作中で描かれる信仰=「クリスタル信仰」についてまとめると、以下のようになります。

【クリスタル信仰】
要点:「マザークリスタル」「神」として崇める信仰
↑クライヴ「人はエーテルの享受をクリスタルの加護として崇め、その加護をめぐり、争い続けてきた
・ヴァリスゼアで起きている戦争は「加護の奪い合い」「宗教戦争」の一面がある。

しかし、同じ「クリスタル信仰」でも、ロザリア公国ザンブレク皇国では微妙な差異があります。

ロザリア公国
「慈悲と伝統の公国」
STORY(ストーリー) | FINAL FANTASY XVI (ファイナルファンタジー16)| SQUARE ENIX
□公国…「公」すなわち貴族を君主として有する国(引用:公国 – Wikipedia
前提①:貴族=「人」が治める国
前提②:そこに暮らす民も(階級はあれど)同じ「人」
ザンブレク皇国
「聖なる神の信徒」
STORY(ストーリー) | FINAL FANTASY XVI (ファイナルファンタジー16)| SQUARE ENIX
□皇国…天皇※が統治する国。(引用:皇国(こうこく)とは? 意味や使い方 – コトバンク (kotobank.jp)
「天皇=神」という概念が根底にある(ex.かつての大日本帝国)
前提①:神皇=「神」が治める国
前提②:そこに暮らす民は「信徒」(神皇とは一線を画する)
□信徒…その宗教を信じているもの。信者。(引用:信徒(しんと)とは? 意味や使い方 – コトバンク (kotobank.jp)

人が治める国だからこそ、ロザリア公国には「慈悲」があります。
(人には人を助ける可能性がある)
一方で、神が治める国であるザンブレク皇国には「無慈悲」な一面があります。
(神は時に「無慈悲」=不幸すら神の意志

また神が治める国であるがゆえに、ザンブレク皇国は【ある問題(=矛盾)を抱えています。
それが「人」ながら魔法を使える「ベアラー」の存在です。

「人」が切り出したクリスタルで魔法を使う分には、問題ありません。
しかし、クリスタルなしに魔法を使う「ベアラー」は、見ようによっては神皇よりも神(=クリスタル)に近しい存在と言えます。

ザンブレク皇国の宗教観上、「神」である神皇より上に「人」がいること重大なタブーです。

シド「真実を知られると都合が悪かったんだろうな。「誰が?」とジルに問われて)神様かな」
(参考:【状況の悪化①】クリスタルの真実

このセリフは、そのことを揶揄したものとなっています。

ロザリア公国ザンブレク皇国を通して描かれるのは、俯瞰の視点から描いた「信仰」です。
これは、多神教(アニミズム)が根底にある日本人ならではの描写(アイデア)といえます。

【状況整理】黒の一帯を「止める」か、「逃れる」か

クリスタルの真実=黒の一帯の原因と合わせて描かれるのが、【ザンブレク皇国の国難】です。

【ザンブレク皇国の国難】
皇都オリフレムにまで「黒の一帯」が迫っている。
・土地を追われた難民が皇都に押し寄せてきている。
・「黒の一帯」の影響で食糧難(小麦の不作)にも陥っている。
・ウォールードとの戦によって兵も損失

この【国難の打開策】として、神皇・シルヴェストル『クリスタル自治領侵攻』を決定します。
しかし、クリスタル自治領には各国間における不可侵条約【設定】されています
※どの国の領地にもしない、という約束事。このため豊かな土地が残っている。

これに対して神皇が持ち出すのが「神託」という言葉です。
□神託…神のおつげ。神が人や物などを通してその意志を知らせること。(引用:神託(しんたく)とは? 意味や使い方 – コトバンク (kotobank.jp)

神皇シルヴェストル「クリスタル自治領を新たな国領に。《グエリゴール》の神託だ」
五賢人「神のご意思ならば!(と言うしかない状況
グエリゴール…ザンブレク皇国で信仰されている女神の名。

先述したようにザンブレク皇国は「神が治める国」です。(参照:【補足】宗教とは①|ロザリア公国とザンブレク皇国
神皇の命令は「神」の意思(=神託)信徒である民(ここでは五賢人)逆らうことは許されません

『黒の一帯』を止めるための、クライヴたちの『クリスタル破壊計画』と、
『黒の一帯』から逃れるための、ザンブレク皇国の『クリスタル自治領侵攻』

ここから【ストーリー】次章へと移ります。

『傾く世界で』~『クリスタルの牢獄』:クリスタル破壊計画①

ここでは、全体(【メインクエスト】+【サブクエスト】)を通してベアラー差別のエスカレートが描かれます。
これにより、クライヴの【目的】“より大きなもの” へと変化します。

【クライヴの目的変化】
①弟の仇討ち:『シドという男』~『因果』

②罪を知り、真実を求める:『重い枷』~『それぞれの想い』

③罪を許容し、償いの道を探す:『望郷』~『生かされた意味』

シドの『クリスタル破壊計画』『傾く世界で』~『クリスタルの牢獄』


【現実②】ベアラー差別(ザンブレク皇国ノースリーチ → ムーア)

クライヴ、ジル、シドの三人は、皇都オリフレムへ入る関所を通過するために、一人ずつ分かれて出立します。
このとき、クライヴ(とトルガル)の道中で描かれるのが、ザンブレク皇国領ロザリア(=マーサの宿エリア)よりも悪化している【ベアラーの現実です。

【ザンブレク皇国領ロザリア(マーサの宿)
“奴隷” に近い扱いではあるものの、“従者” という言い訳が成立している(=「人」
・石化で死ぬにしても教会で看取られている

【ザンブレク皇国ノースリーチ(マダムの町)
・関所前のマルシェには奴隷商も店を連ねている(=「物」
・休みも食べるものも与えられずに過酷な労働を強いられている

【ザンブレク皇国ムーア】
・過酷な労働を強いられている上に、虐待(猟犬の玩具もされている
・農場で野垂れ死ぬ(=「壊れた」ら「新しいの」と交換

「人」→「物」→「玩具」と村を経るごとに(=皇都オリフレムに近づくにつれ悪化していきます。

ここで発生する【サブクエスト】で、物語上、特に示唆的なのが『命の重さ』です。
※【サブクエスト】についての考察も後々追記していく予定です。

【サブクエスト】『命の重さ』…猟犬の玩具にされるベアラー

【ストーリー】
「助けて」という子供の声。駆け付けたクライヴは魔物を倒す
②しかし、その魔物は猟犬として飼っているもの子供によるベアラー遊び
③子供の遊びを邪魔したクライヴ(=彼らにとってはベアラー)に、父親は激怒する
④新たな猟犬として捕獲した魔物に父子は噛み殺される

そして、クライヴはベアラーの遺体(=遊びの犠牲者)を埋葬しますが、このとき、マダムの仲間の男性が次のセリフを口にします。

いつか(ベアラーに)牙を剥かれた時、”人様” はどうするつもりなんだろうか」

【サブクエスト】にも含み伏線がしっかり組み込まれているところが、FF16の緻密なところです。

【クリスタル破壊 1/4】シドの死・アルテマとジョシュア

教会で無事にジルとシドと合流したクライヴは、いよいよ皇都オリフレム(=ザンブレク皇国)へ潜入します。
そして目的地=「クリスタルコア」(コアを壊せばクリスタルは消える)まで到達するクライヴたちでしたが、シド(=ラムウに顕現)クリスタルから現れた強敵の前に倒れます。

クライヴ「俺がイフリートになれれば……」
クライヴはまだ自らの意思でイフリートになれない
????「汝の力を見せてみよ

そして再び別の空間へと移ったクライヴは、怒りを契機にイフリートに顕現強敵を倒します。
※フェニックスゲートでイフリート(=自分)と対峙した時と同様の現象。

無事に元の空間へと戻るクライヴですが、倒したはずの強敵が再び目の前に現れます。

????「我が器にふさわしい今こそ一つになる
シド「ようやく分かったぜ……お前が “奴” を狂わせたのか……
(シドが最後の力を振り絞って強敵を刺す)

死に際、シドはクライヴにラムウの力(雷の召喚獣)を継承し、そして言い残します。

シド「俺が本当に欲しかったのは誰もが自分の意志で生きられる場所だ……。窮屈なクリスタルの牢獄を、ぶち破るんだ。いい悪党になれよ、クライヴ

このあとクライヴとジルは、強敵によって絶体絶命の危機に陥ります。
この二人の危機を救うのがジョシュアです。

ジョシュア「そこにいるのだろう、アルテマ(=強敵の名)お前のことを探るために、ずいぶんと旅をした。僕たち兄弟が引き裂かれてから、ずっとね」

【ジョシュアの13年間】
クリスタルの中から現れた強敵=アルテマについて探っていた。
(このため、クライヴとジルと同日にフェニックスゲートにも居合わせた)
↑結果、アルテマの狙いクライヴだということを知った。

「器は渡してもらう」と迫るアルテマに対し、ジョシュアは「兄さんはこの僕が守る」と断言し、 “転生の炎” で自身の中へ封じ込めます。
(この光景を朦朧としながらもクライヴは目撃するジョシュアの生存を知る

そして場面は変わって、フーゴの私兵による【シドの隠れ家の襲撃】が描かれます。
当然、ここにシド(フーゴにとっては愛するベネディクタを殺した仇はいませんが、知る由もないフーゴはタイタンとなって隠れ家を破壊し尽くします

【細かな描写】クライヴのリアクション|グローブ越しの石化を “伝える”

マーサの宿で「腕の石化」が描かれたところから、シドの「生」のカウントダウンが始まります。
クライヴとジルが加わったことで始まる『クリスタル破壊計画』ですが、実は「イーストプール事件」より前からシドは動いています(※ガブのセリフ「シドのやつ何か企んでた」)

シドは、「死」を見据えた上で行動しています。
(だからこそ「人が人らしく死ねる世界」にこだわっている)
このことをやけに楽観的な言動だけでなく、FF16はキャラクターの微細な表情でも演出します。

皇都オリフレムのクリスタル(=ドレイクヘッド)に向かう途中、シドの足場が崩れ、間一髪の所でクライヴが助ける【シーン】があります。
引き揚げたシドの手を放した後、クライヴの表情がわずかに陰ります

いつも通りのお気楽なシドただ呆れたようにも見えますが、うがった見方をすれば、グローブ越しにシドの石化が伝わったと読み取ることもできる。
まるで、実際の俳優が演じているような【リアルな演出】になっています。

『大罪人シド』~『氷華に舞う』:5年後、クリスタル破壊計画②

ここでは、シドの死から5年後の【状況整理】ジルの【サイドストーリー】が描かれます。

【クライヴの目的変化】
①弟の仇討ち:『シドという男』~『因果』

②罪を知り、真実を求める:『重い枷』~『それぞれの想い』

③罪を許容し、償いの道を探す:『望郷』~『生かされた意味』

シドの意志を継いでクリスタル破壊『大罪人シド』~『氷華に舞う』

【クライヴの正義と弊害】「不安」よりも「不幸」を選ぶリアルな人間心理

シドの死から5年。
クライヴ(33)は「2代目シド」として意志を引き継いでいました
※このときすでにクライヴの頬からはベアラーの刻印が消えている。(隠れ家の医師・タルヤによって取り除かれた)

一方、仇を討ち損ねたフーゴ(5年前、シドは隠れ家にいなかった)は、無関係なベアラーを使って「シド(クライヴ)」を捕えようと躍起になっています。
餌に使われるベアラーたちの怒りは、当然、クライヴに向けられます

「私たちは奴隷なりに静かに暮らしてきた。それを、あんたたちがちょっかい出すせいで!」

【クライヴの理想】
人が人として生きられる世界
↑このための戦いは、一方で “奴隷の平和” を乱している
※心理学上、人は「不幸」よりも「不安」を恐れる
ex.夫のDVに悩む妻=「別れた後の暮らしの不安」よりも「夫に殴られる暮らしの不幸」を選ぶ

また、【クライヴの理想】の弊害“普通の人々” にも及んでいます。

クリスタルが消えてから、魔法の力が弱くなった
※飲み水すらクリスタルの魔法によって確保している世界

このように、クライヴの『クリスタル破壊計画』=「主人公の正義」を、本作は人々の不安を煽る行為として描き出します。

「主人公」と「ボス」だけでなく、「周辺の人々」の【リアルな視点】を取り入れているところが【作品テーマ】普遍的なものへ引き揚げています

【参考文献】

 

“シド” と “クライヴ” の呼び分け理由

「シドの隠れ家」壊滅後、クライヴは「新たな隠れ家」を黒の大地の湖に造りました。
そこでは以前と同様にベアラーたちが暮らしていますが、クライヴを「クライヴ」と本名で呼ぶ人もいれば、「シド」と呼ぶ人までさまざまです。

この違いは、「どの時点からの住人か」によるものだと私は考えています。

もともと「シドの隠れ家」に暮らしていて、フーゴの襲撃から辛くも生き残った住人と、
「クライヴの隠れ家」完成後に新たに加わった住人

「両者が力を合わせて暮らしてきた5年」を感じ取れる【描写】となっています。

【情報整理】クライヴの状況・各国の動向

ここまでの【ストーリー】を整理すると、以下のようになります。

【ザンブレク皇国と、その他の国の動向】
①ザンブレク皇国はクリスタル自治領へ遷都
・不可侵条約を一方的に破棄(バハムートの威を借り断行)
↑クライヴたちの『クリスタル破壊計画(=ザンブレクのドレイクヘッド)』の背後で起きたこと。

他国にとってもクリスタル自治領は魅力的なのは同じ(≒地理的要衝)
乱世が加速している
↑クライヴたちにとっては “追い風”自分たちから目が逸れる
【クライヴの状況】
①未だにイフリートへの顕現ができない
・クライヴ「いつも何かがあの力を塞き止めている」
②あのときジョシュアは間違いなくそこにいた
・手元のフェニックスの羽が証拠
アルテマの存在も気になる
ジョシュアはきっとアルテマを追っている

「できることをやるだけ」
つまり、全てのマザークリスタルを破壊する」ことを、クライヴはジルと改めて決意します。

ここでその【対比】として挿入されるのが【ジョシュアのシーン】です。

クライヴも予想していたように、ジョシュアは従者と共にアルテマを追っています

ジョシュア「アルテマの痕跡を追う先々で、世界が死んでいく。ねえ、兄さん……僕らに何ができる……?

【状況悪化】ベアラー粛清|マーサ=人のために戦ったベアラー

マーサの宿の危機の報せに、クライヴとジルは助けに向かいます。
ここで再び登場するのが、ベアラーを看取っていた修道院です。

【ストーリー】
5年前…イーストプールの “大公派” 虐殺
(ロザリアを治める属領総督府の名のもと、ベアラーを匿う者たちを大公派と称して虐殺した事件)

現在…今では “ベアラーそのもの” に矛先が向いている

↓結果

ロザリア駐屯兵(ザンブレク兵)がマーサの宿に押し入った】
・ベアラーを守ろうとしたマーサを連れ去った(住民にも暴力を振るった)
・駐屯兵は「ベアラー粛清」と口にしていた。
・マーサ発見← ベアラーたちがマーサの盾になって逃がした

黒騎士たちが出たんだよ!」というマーサの言葉の通り、クライヴとジルは修道院で黒騎士と戦闘になります。
※黒騎士…ベアラー粛清のためにつくられたザンブレクの特務部隊ベアラー粛清「ロザリス城下」→「ロザリア全土」へと拡大している。

黒騎士「ベアラーも、それを庇いたてる者も、この世の穢れに他ならん」

【補足】宗教観①|ロザリア公国とザンブレク皇国で先述したように、

【ザンブレク皇国】
前提①:神皇=「神」が治める国
前提②:そこに暮らす民は「信徒」(神皇とは一線を画する)

これゆえの【矛盾】=「ベアラー(神皇よりも神=クリスタルに近しい存在)
・クリスタルなしに魔法を使うベアラーは、宗教上看過できない「穢れ」

ザンブレク皇国の宗教観上、「神」である神皇より上にいる「ベアラー」重大なタブーです。
このタブーを「この世の穢れ」として「浄化=粛清するというのが、現在のザンブレク皇国の方針であることがここで描かれます。
(問題は、それが「誰」の決めた方針か。「何」を契機に始まったか

また、この短いエピソードの中には、今後のストーリー上の【伏線】となる出来事も描かれます。

それが、マーサを逃がすために「ベアラーが交戦した」という事実です。
(ベアラーたちはマーサのために全身が石化するまで戦った。最後には砕け散った彼らクライヴが水葬“人として葬送” する)

【クライヴの成長】シドとして生きるための努力|クリスタル破壊計画②

ザンブレク皇国の皇都・オリフレムのクリスタル破壊から5年
この間、人々の使うクリスタルの力は弱まりベアラー自身も魔力低下に陥る事態が続いています。
つまり、人々のクリスタル(力・資源)への渇望ますます高まっている【状況】です。

マーサの危機を救ったクライヴとジルは、斥候任務から戻ったガブによって再び隠れ家へ呼び戻されます。
そして、ここでのガブの会話を通して、より具体的な【状況整理】が挟まれます。

【現状】クリスタル自治領をめぐる乱世となっている
・クライヴたちにとっては “追い風”=自分たちから目が逸れる

↓具体的には、

ダルメキア共和国がクリスタル自治領(ザンブレクの新皇都)へ進軍

他国もこの【状況】を注視
・あわよくば便乗して、クリスタル自治領(豊かな資源の残る土地)を手に入れたい

クライヴ「動くなら今だ」
誰もがクリスタルを渇望する中、まさか破壊活動が行われるとは思っていない

そして、“どのクリスタルを狙うか” へ話は移ります。

【残るクリスタル】=4つ
ドレイクテイル…クリスタル自治領(ザンブレク皇国の支配下)
↑クライヴたち以外のみんなが狙っている
ドレイクブレス…鉄王国が所有
ドレイクファング…ダルメキア共和国が所有
④ドレイクスパイン…ウォールード王国が所有

このとき、②か③かの判断を、クライヴは合理的に下します。
※ウォールード王国は海を隔てているため、④はガブの諜報圏外

クライヴ「戦を仕掛けた側であるダルメキアは、当然背後鉄王国の奇襲を警戒している」
↑逆に言えば、鉄王国にとってはダルメキアのクリスタルを狙う好機

鉄王国のクリスタルには、地の利(いわゆる “海城” の状態があります
このため、守備にも人を割かなくてはならないダルメキア共和国と違い、鉄王国は攻撃に徹することができます
この虚を衝こうとクライヴは考えます
(つまり②鉄王国のドレイクブレスを目標に定める

プレイヤーに対する説得力はもちろん、このシーンには「在りし日のシド」も描き込まれているように思います。

「シド」を名乗って活動する以上、クライヴにはシドと同等の能力が要求されます
しかしそれは “ラムウの力” ではなく、“元騎士長(指揮官)” としての能力です。
【シドの人物像】元騎士長ゆえの人心掌握術参照

クライヴが少年期「ジョシュアのナイト」としてあろうとしたように、
青年期「シド」としてあるための努力を続けてきたことが窺えるシーンとなっています。

【クライヴの再会①】アナベラの蛮行②と “種火の守り手”

鉄王国のクリスタル(=ドレイクブレス)に向かうには、沖へ出るための船が必要です。
ここでクライヴの口から明らかになるのが、自身の叔父(バイロン・ロズフィールド)の存在です。
貴族でありながら貿易商を営んでいる叔父ならば、商船を都合できると提案します。
小さな船では沖の荒波で転覆してしまう。このため大型船=商船が要る、というやはり説得力のある進行になっています)

叔父の協力を得るため、クライヴはジルとともに港町(=ポートイゾルデ)へ出立します。
この時もクライヴは、先述したようにシドを参考に「ドミナントだけでの行動」を選びます
(一方、ジルには “個人的な理由「やり残したこと」” がありますが、こちらは後述します)

このとき、二人が道中通りがかる村(=ザンブレク領ロザリア・アンバー)では、黒騎士による恐怖支配が描かれます。

属領総督府(=アナベラの指揮下)に楯突く “逆賊” が現れたという噂がある。【伏線】
↑このため、黒騎士たちが村々を威嚇して回っている
粛清された村(=5年前のイーストプール)二の舞にはなりたくないと怯える人がいる一方、黒騎士に憧れる若者も描かれる。

「属領総督府に楯突く」ということは、他にもマーサのように「ベアラー保護」をしている者たちがいるということです。
だからこそ黒騎士たちは、彼らの排除に躍起になっています。

このとき、クライヴとジルはそれぞれ別のリアクションを示します。

黒騎士が動いているということは、裏にアナベラがいる

クライヴ「平伏しているうちは襲われない」=【安心】
ジル「民を恐怖で縛るなんて」=【怒り】
クライヴとジルの【経験の違い】を表す描写(後述します)

ひとまず当初の目的であった港町へと進むクライヴとジルですが、
黒騎士との戦闘を経て辿り着いた小さな村(=オールドヒル造船所)で、再び「ベアラー粛清」を目の当たりにします。

しかし、この「見せしめ」一度目(イーストプールの虐殺事件)よりも凄惨を極めています。

【イーストプール】
・村人たちはひたすら虐殺された。
↓5年後
【オールドヒル造船所】
・虐殺された上、柱に括られ、吊るされる

ベアラーの迫害アナベラの蛮行のエスカレートに憤るクライヴとジルですが、現時点では二人にそれを止めることはできません
いまの二人にできるのは、クリスタル破壊(=ポートイゾルデの叔父を訪ねること)だけです。

しかし、それすらザンブレクの兵士ロザリアの元兵士も入り混じっている=誰もが生きるのに必死によって阻まれてしまいます
(叔父のもとへ渡るためのビュイット大橋も、ロザリス城への門封鎖されている)

このことと合わせて、ベアラーでない普通の人々の【窮状】も描かれます。

ロザリス城門前には、黒の大地に追われ、行き場を失くした難民が大勢押し寄せています。
しかしクライヴたちと同様、やはり中へは入れてもらえません。
※これは作品冒頭(18年前)から描かれていた窮状です。クライヴの父・エルウィンの頃から、首都ロザリスはロザリア北部からの移民問題を抱えていました。この打開策として鉄王国のとの戦いドレイクブレスの奪還。つまり、そもそもロザリアのクリスタルだった)を選んだ結果、ザンブレクに奇襲の隙を与えてしまいます。

このとき、やむなく地下通路へ進路を変更したクライヴが遭遇するのが「種火の守り手」です。
戦闘したことでクライヴの炎の力に気付いた彼らの頭目は、クライヴに今は亡きロザリアの敬礼を向けます。

彼の正体は18年前、フェニックスゲートへの奇襲で死んだと思われていたウェイドでした。
ウェイドはロザリア公国騎士の生き残りを率いて「種火の守り手」を結成し、密かにベアラーの保護活動をしていました。
この活動を、裏でクライヴの叔父が支援していることも明かされます。

彼らとの共闘を経て、ひとまず黒騎士の足止めを果たしたクライヴとジルは、いよいよ叔父のもとへと向かいます。

【クライヴの再会②】叔父バイロン|『聖騎士』に憧れた “少年” の皮肉

別れ際、クライヴはウェイドから次の忠告をもらっていました。

ウェイド「あのお方は、あなたが亡くなったものと思っておられる。そのため、お心を閉ざされてしまった

この言葉の通り、再会した叔父・バイロン“甥(クライヴ)の生存” を信じません

そこでクライヴが持ち出すのが、この世界の『神話』として語り継がれている『聖女と騎士』の一節です。

クライヴ「この我こそは、聖騎士グランダル・キャメロット聖女シビルが使徒!」

かつての「ごっこ遊び」を再現することで、クライヴはバイロンとの絆を取り戻します
キャラクターの表情、声優の方の熱演による、作中屈指の名シーンです。

一方で、このシーンはクライブの現状に対する【皮肉】にもなっています。

少年期のクライヴは、『聖騎士(=ヒーロー)』を好んで演じていました
そのせいで、バイロンはいつも『悪役マドゥ(=悪党)』だったと懐かしみます。

しかし、そんな無邪気な少年だったクライヴが、青年期のいま演じているのは『大罪人シド(=悪党)』です。

【15歳のクライヴ】
ヒーローになりたかった

【33歳のクライヴ】
悪党になるしかなかった
(シドの意志を継ぎ、全てのクリスタルを破壊するために)

ここで引用したいのが、本作のテーマソング『月を見ていた』の歌詞です。

『月を見ていた』米津玄師
全てを燃やしてを見ていた
全てを懸けて「願い ≒ 人が人として生きられる世界」を実現しようとしていた
誰かがそれを憐れむとしても
(転載元:Lyrics | Song | 月を見ていた (lyricfind.com)

クライヴの不幸(=憐れ)は、彼の誕生からすでに始まっています。

フェニックスを期待されて生まれたのに、その力を持っていなかった
それを埋め合わせる(=償う)ために、クライヴは「弟のナイト」として生きる道を余儀なくされます
だからこそ、『聖騎士(=ヒーロー)』に憧れを抱きます

【クライヴの境遇と選択】
①フェニックスを生まれ持たなかった
→➊弟のナイトとして生きる
②弟を目の前で殺される
→❷弟の復讐のために敵国の奴隷兵士(=ザンブレクのベアラー兵)として生きる
③弟を殺したのは自分(=イフリート)だった
→❸「生きる意味(償い)」を見出すために真実を求める(そして「過酷な現実」を知る)
④シドの道が「現実」を変えると信じる
→❹シドの意志を継ぐために大罪人シドとして生きる

クライヴが最善を尽くす(ストーリーが進行する)たび、彼の状況は悪化し、
今や『聖騎士(=ナイト)』とは真逆の、『悪党(=大罪人シド)にまで追いやられています。

正義を貫こうとするほど、クライヴの立場は悪くなっていく。

この【皮肉】も、プレイヤーを今作に惹きつける魅力となっています。
※この【皮肉】を、叔父バイロン「なら、わしも今日から悪党の一員だ!笑い飛ばす。この明るさに、クライヴもプレイヤーも救われる

【考察】クライヴが “嘘をつくときの癖”

叔父バイロンは、クライヴが語った「クリスタルの真実」を呆気なく信じます
その理由をバイロンは次のように答えます。

バイロン「お前には、嘘をつくときの癖があるからな」

クライヴ本人思い当たる節がないのに対し、
ジルは「そう……かもね」と知っている様子を見せます。

実はここまでのストーリーの間には、クライヴが嘘をつくシーンが用意されています。
ジルと共に、イーストプールでハンナ(=マードック将軍の妻)と再会した時のシーンです。

 ハンナ「そうですか。あの日からずっと旅を……幼いおふたりだけで旅なんて……」
↑本当はクライヴは敵国のベアラー兵、ジルは兵器(シヴァ)として酷使されていたが、とても言えずに嘘をつく

嘆いてくれるハンナの顔を、クライヴはまともに見ることができません
なおも見つめ続けるハンナを、クライヴは「色々ありました……」と頬の刻印を隠すような仕草でやり過ごします

クライヴは嘘をつくとき、 “相手の顔が見られない”

この “癖”【伏線】は、【ストーリー終盤】ジルとのシーンで回収されます。
(後述します)

2023.9.7 『ファイナルファンタジーXVI アルティマニア』が発売されました。
その中でこの「クライヴの癖」に対する記事があるとのことですが、
①私自身が未読のままにしていること②「癖があった」場合の考察が気に入っているので、あえて掲載したまま、【ストーリー終盤】の解説まで続けます。


【サイドストーリー②】ジルの “やり残したこと”=過去との決別

バイロンが商船を用意する傍ら、ジルはクライヴに過去(=彼女にとっては罪)を告白します。

【ジルの13年間】
「鉄王国のシヴァ」として大勢の人を殺した
・人質を取られ、戦うほかになかった。
↑そのためには “人形 ≒ 獣” になるしかなかった

つまり、ジルは「”自我” を捨てるしかなかった」と言います

ジル「私は人でありたいの、クライヴ。あなたといたいから“自分の意志(=自我)” で歩む道を選んでいきたい。そのために私は “やり残したこと”……自分の過去に決着をつけなきゃならない」

この【ジルの過去】は、【クライヴの過去】とも重なります。

【クライヴの過去】
イフリートとして大勢(弟や仲間)を殺した。
受け止めきれずに「ローブ姿の男」を生んだ。
過去を受け入れ、「シド」※として生きる道を選んだ。
クライヴにとっての「シド」「人らしく死んだ人」
【ジルの過去】
シヴァとして大勢(敵兵)を殺した。
受け止めきれずに「人形」になった。
過去を受け入れ、「人」として生きたいクライヴのように)。
ジルにとっての「クライヴ」今も昔も「人」

5年前の再会後、クライヴはイーストプールへ立ち寄ったその夜に、ジルから次の言葉をもらいます。

ジル「あなたは生きているそれにはきっと意味があるのよ
※参照:【クライヴの後悔】罪を犯して生き残った

この時点でのクライヴは、まだ本当には過去(=自分が弟や仲間を殺した)を受け入れられていませんでした

しかし、このジルの言葉があったからこそ、
クライヴは自分(自我)を保ち、
その後のフェニックスゲートでイフリート
(=過去)を受け入れることができます
“イフリートの力” を獲得する=“過去” を糧に強くなる

だからこそ、クライヴもジルに寄り添います。

クライヴ「俺が支える俺がつらいとき君がそうしてくれたように

また、互いを支え合うこの二人の会話の下地には、シドの言葉も生きています

シド「(クライヴに)過去のお前を、なかったことにするなよ。自分を受け入れてやるんだお前を救えるのは、お前だけなんだから」
※参照:【現実①】ベアラー差別(ザンブレク皇国領ロザリア)

この後、ゲームの進行上、【情報整理】のために再び隠れ家に戻ることになりますが、
ここでのクライヴのセリフもその “都合” を感じさせない気の利いたものになっているのでご紹介します。

クライヴ「一度戻るとしよう。船が用意できるまで、まだしばらく時間がある

5年前、まだ復讐のために「ローブ姿の男」を追っていた頃
逸るクライヴをシドが宥めたように、今度はクライヴがジルを宥めます
(”シドの死” は単にストーリーを盛り上げるためでなく、きちんとクライヴの成長に繋がっている

【補足】宗教観②|鉄王国とザンブレク皇国の違い

一端、ジルと共に隠れ家へ戻ったクライヴは、ヴィヴィアン(隠れ家に身を寄せる軍事学者)から鉄王国について話を聞きます。

ここで「ロザリアと鉄王国の歴史と、「鉄王国とザンブレク皇国の違い」について【情報整理】がなされます。
80年前に風の大陸北部のマザークリスタル(ドレイクアイ)が消滅。これをきっかけにロザリア公国と北部諸国(ジルの故郷)が衝突。この戦の陰で、鉄王国はロザリア公国の聖地(マザークリスタル=ドレイクブレスのある島)を侵犯。その後、ロザリア公国滅亡を機にロザリアの聖地は完全に鉄王国の支配下となった背景があります。

鉄王国ザンブレク皇国も、クリスタル信仰で国を治めているのは同じです。
しかし、両者の間には似て非なる違いがあります。

【鉄王国】…クリスタル正教が国家の基盤
・マザークリスタル=聖なるもの
・エーテル=聖なるものから出た穢れであり
↑これを利用することは禁忌
魔法を使うベアラー(ドミナント)はそのを食らって生きる穢れた存在
【ザンブレク皇国】…「神」が治める国
・マザークリスタル=エーテルをもたらす
・エーテル=クリスタルの加護
↑実際に国を治める神皇=「神」
魔法を使うベアラー(ドミナント)神皇よりも「神」に近い穢れた存在
【補足】宗教観①|ロザリア公国とザンブレク皇国参照

鉄王国においても、ザンブレク皇国においても、ベアラー(ドミナント)は迫害されています
しかし、前者は「禁忌を犯しているため」後者は「神に近すぎるため」とその動機は異なります。

一方で、“人が君臨する宗教国家” という点では両者は同じです。
ザンブレク皇国では神皇シルヴェストルが、鉄王国では大司祭イムランが絶対的な力を握っています。

【情報整理】クライヴとジル、それぞれの目的|クリスタル破壊と大司祭殺害

鉄王国について語り終えたヴィヴィアンは、クライヴに問いかけます。

ヴィヴィアン「どうだね、クライヴ。ついでに祖国の復讐も果たしてみては?
※そもそもクライヴの父・エルウィン【冒頭】で戦に踏み切ったのは、鉄王国に占領されたロザリアの聖地(=ドレイクブレス)を奪還するため。このとき陰で暗躍したクライヴの母・アナベラ(延いてはザンブレク皇国)によって、18年前にロザリア公国は滅亡した。そのときにジルを含む女子供が鉄王国へさらわれた

しかし、クライヴは取り合いません
ここには、【クライヴの決意】アナベラの蛮行①・クリスタルの真実で語られたクライヴの【成長の結果】が反映されています。

【クライヴ(15歳)】
弟の復讐のためだけに生きていた。
↓13年後
【クライヴ(28歳)】
ジルとの再会、シドと出会いを通して、過去を受け入れ、未来のために生きる道を選ぶ。
※具体的には “人が人として生きられる場所” をつくろうと決意する。これは “誰もが人として死ねる場所” をつくりたいと言ったシドよりも高い目標
↓5年後
【クライヴ(33歳)】=現在
「過去のための “復讐”」よりも「未来のための “破壊”」が大切

ヴィヴィアンに対する「俺はドレイクブレスを破壊しに行くだけだ」というクライヴの短い言葉には、現在までの18年間が込められています

一方、ジルの【具体的な目的=”やり残したこと”】についても、ここでようやく明かされます。

ジル「クリスタル正教の最高指導者――大司祭イムランの息の音をこの手で止めることよ。それが自分の過去と向き合い決着をつけるただひとつの方法だから」

【鉄王国での目的】
・クライヴ=クリスタル(ドレイクブレス)の破壊
・ジル=大司祭イムランの殺害

「なぜイムランを殺害するのか」というを残したまま、二人は鉄王国へ出立します。

こちらのブログは現在、執筆途中です。
手元のゲーム進行に合わせて、随時追記していきます。
Xにて「#ユリ16」で検索していただくと、アカウント「@yureeca_」の『FINAL FANTASY XVI』関連ポストがご覧いただけます。

当ブログ『ユリイカ』は、Twitterアカウント「ユリイカ@映画垢 をほぼ毎日更新しています。

映画やドラマの感想、プロット視点での気づきなど、洋画・邦画・韓国ドラマと幅広いジャンルで呟いています。
無言フォロー大歓迎ですので、よろしければこちらもご覧ください。

【参考サイト一覧】

FINAL FANTASY XVI (ファイナルファンタジー16)| SQUARE ENIX
ファイナルファンタジーXVI – Wikipedia

コメント