(使用写真:HD wallpaper: The Shining, movies, Stanley Kubrick, childhood, one person | Wallpaper Flare)
こんにちは、ユリイカです。今回は、言わずと知れた名作サイコホラー『シャイニング』についてお話します。
『シャイニング』の舞台「オーバールックホテル」
本作はホラー小説の巨匠スティーブン・キングの作品を原作に、スタンリー・キューブリック監督によって1980年に製作されました。
あらすじ
そのホテルでは、かつて精神に異常をきたした管理人が家族を惨殺するという事件が起きており、当初は何も気にしていなかったジャックも、次第に邪悪な意思に飲みこまれていく。
(シャイニング : 作品情報 – 映画.com (eiga.com) より引用)
この “いわく付きホテル” が、物語の舞台となる「オーバールックホテル」です。
ホテルの内装からわかること
映画序盤、セリフの中でホテルの成り立ちについて言及されます。
つまり、「オーバールックホテル」は、
ネイティブアメリカンの土地(それも墓地)にアメリカ人(侵略者)が建てたホテルだということです。
ロビーに敷き詰められた「ラグ」
カメラの映す解放感のある広いロビーには、いわゆるネイティブ柄のラグが所狭しと敷かれています。
(使用写真:17 Beautiful Horror Movie Homes We’d Actually Like to Live In | Vogue)
「ネイティブ柄」とは、主にネイティブアメリカンに伝わるデザインを指します。
ひとつひとつのデザインには、ナバホ柄、オルテガ柄など各部族の名前が付いています。
また、ラグのほかにも、壁面にはネイティブアメリカンの壁画を模したような大きな絵も飾られています。
「前はインディアンの墓地だった」という支配人の言葉を踏まえると、
これはその美しさからインテリアとして採用されたのではなく、
制圧を誇示するための記念品を飾っていると捉えることができます。
「ラグ」の上を歩き、三輪車で遊び回る
『シャイニング』を未視聴の方でも、不気味な双子や、エレベーターから迫る大量の血、三輪車で走る子供は、一度はどこかで目にしたことがあるのではないでしょうか。
三輪車で遊ぶ子供はダニー。
狂気に走る父親の息子で、彼こそが「シャイニング」=超能力の持ち主です。
彼がホテル内を疾走する車輪の音は、床では硬く、ラグでは重く、静かなホテル内に響きます。
不規則で不気味な面白い演出となっていますが、
この「ラグ」=ネイティブアメリカンを象徴するデザインであることを考えると、
「子供の無邪気」がネイティブアメリカンの象徴を「踏みにじる」。
不敬を演出する(土地に祟られても仕方がない)シーンになっています。
「熊」が意味するもの
映画終盤、狂気に憑かれた父親・ジャックから逃げるうち、母親・ウェンディはダニーとはぐれてしまいます。
ダニーを捜して、ホテル内を探索するウェンディ。
彼女は途中、一室のドアが開いていて、その中で男性同士が行為に及んでいるところを目撃します。
「熊」の着ぐるみの男性
(使用写真:The Untold Truth Of The Shining – Movie Content Plus)
片方は、タキシード姿の白人男性。
もう片方は熊の着ぐるみを着ています。
インターネット上には「撮影時の子供(ダニー役)への配慮」「不気味さの演出のため」という意見も見られますが、
それだけでは「熊」であることへの説得力に欠けるように思います。
(実際、このシーンを目撃するのはウェンディで、ダニーではありません)
「熊」=「神」の象徴
東北のマタギ、北海道のアイヌをはじめ、狩猟によって生きる部族の間では、
「熊」はしばしば「神の遣い」、もしくは「神そのもの」として崇拝されます。
ネイティブアメリカンも同様で、
彼らの神話には「熊」が頻繁に登場し、「強さの象徴」「彼らの守護者」として語られます。
しかしこのシーンでは、その「熊」を白人にひざまずかせ、ふしだらな行為をさせる。
こう考えると、この「熊」のシーンは「ラグ」以上に、ネイティブアメリカンを侮辱する演出となっていることがわかります。
ネイティブアメリカンの祟り
ここまでの考察をまとめると、
②ホテルの内装は「ネイティブアメリカンのデザイン」で揃えられている(つまり制圧を誇示するための記念品)
③ネイティブアメリカンの神である「熊」に扮して背徳行為に及ぶ
徹底してネイティブアメリカンに対する非礼が演出されています。
妻と娘を襲う「斧」=トマホーク
わたしは原作も未読のまま、映画も一度視聴しただけに過ぎません。
そのため、ジャックの狂気の根本理由(なぜ鏡に影響されるのか等も含め)は判然としませんが、
このホテルで起きる不幸の原因は、ネイティブアメリカンの祟りに間違いないでしょう。
だからこそ、終盤でジャックは「斧」を振り回し、妻と息子を恐怖に陥れる。
序盤で支配人が語ったジャックの前任者も、「斧」で妻と双子を惨殺しています。
劇中、「斧」は「axe」と発音されますが、
「斧(axe)」の中には「トマホーク(tomahawk)」と呼ばれるものがあります。
(トマホーク – Wikipediaより引用)
つまり、祟りに憑かれた父親が使うのは、ネイティブアメリカン由来の武器だということです。「(ホテルの)建築中には襲われた」と支配人のセリフにありましたが、おそらくこの時にもトマホークが使われたのでしょう。
ネイティブアメリカンの武器が、神聖な墓地を奪った白人に復讐する。
本作に当時、多くのアメリカ人が震えあがったのは、ネイティブアメリカンを迫害した彼らの歴史が罪悪感を呼び起こし、恐怖をもたらしたからと考えられます。
ストーリー(脚本)としては微妙な部分も多く、他でもない原作者・キング本人が強く非難している実写映画ではありますが、
これらの意図をもってキューブリック監督が演出したと考えると、その緻密さに圧倒されます。
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