(使用写真:https://news.livedoor.com/article/detail/20307433/)
こんにちは、ユリイカです。
第6回目となる今回も、引き続き『るろうに剣心 最終章 The Beginning』のストーリーを、シーンごとにネタバレありで解説していきます。
※ネタバレなしの解説は、【完全解説】るろうに剣心 最終章 The Begining|【1】ストーリー解説(ネタバレなし)をご参照ください。
巴の復讐=単なる “恨み” からではない
縁が来たことを受け、ついに巴は剣心に過去を打ち明けます。
・病弱な母親は縁を生んで死んだ。(つまり、縁にとっては巴が母親代わり)
・縁は思い込みの激しい気性だが、巴にとっては可愛い弟
・幼馴染のもとへ嫁ぐことが決まっていたが、相手は祝言の前に死んだ。
(清里殺害のシーンでは、「こんな時に祝言を挙げるなんてなあ!」と第1作目からしっかりとセリフで仕込まれています。10年前からきちんと剣心のバックストーリーをふまえて製作されていたからこそ、『The Beginning』の成功があります)
かざぐるま=平和の象徴
寝かし付けた縁の傍らで、巴はふっと “かざぐるま” に息を吹きかけます。
“かざぐるま” は第3作『京都大火編』でも使われた “平和を象徴するアイテム” です。
(新井青空のもとへ向かう剣心が、その息子・伊織へのおみやげに持参しています)
また、このシーンには巴の白無垢(花嫁衣裳)も映り込んでいます。
巴の幸せが奪われる直前、縁にとっても最後の穏やかな時だったのでしょう。
剣心と巴の切なさ=拭いきれないギャップ
ようやく結ばれる剣心と巴ですが、
剣心が全てを包み込んだつもりでいる一方で、巴はまだ(最大の)秘密を抱えています。
巴だけが剣心の傷の理由を知っている
寄り添うふたり。そして、巴が剣心の頬の傷に触れる。
ここで押さえておきたいのは、
・巴にとっての頬の傷=清里のいわば “生” の爪痕
結ばれたように見える二人ですが、深層では未だにギャップを抱えているということです。
巴が剣心に惹かれるのは必然だった
巴には、清里への後悔と罪悪感があります。
しかし剣心の苦悩を知るにつれ、思わず惹かれてしまった。
「恋愛」という感情は、つまるところ「不安に対する心の揺れ」です。
“この相手と関係を保っていたい” と思うからこそ、いつか来る破綻に「不安」を覚える。
しかし、「不安があるからこその高揚感」というものも確かに存在しています。
(“好きになってはいけない人を好きになってしまった” というのはまさにこの現象です)
巴は、剣心との日々が永遠には続かないことを知っていた。
続けてはいけないことも知っていた。
そういう意味で、巴が剣心に惹かれることは必然だったと言えます。
そして翌朝、巴は剣心のもとを離れます。
【参考文献】平山夢明『恐怖の構造』
巴は未来へ、剣心は過去へ
いよいよ降り満ちた雪の中、最後の日記を書き終え、ひとり出ていく巴。
※「降り満ちた雪=観客の不安も最高潮」という状態です。【完全解説】るろうに剣心 最終章 The Beginning【5】禁門の変(長州の都落ち)参照
このとき、
・巴も初めて日記を机の上に出したまま、懐剣だけを抱えて出ていく
剣心だけが作中でもっともプラスの状態にあり、一方の巴は作中でもっともマイナスの状態にいます。
このふたりの格差が、辿り着く結末をより悲壮に高めます。
日記を置いて出ていく巴
これまで巴の日記は、常に “ひそやかなアイテム“ として描かれてきました。
書くのも剣心が眠っているとき、書いた後は必ず引きだしにしまっていました。
しかし、その日記を巴は机に出したまま出ていく。
「最期になるかもしれないから(遺言)」ということは説明するまでもありませんが、
日記=「過去(清里のために生きる日々)」を象徴するアイテムであることを考えると、
単に「死を覚悟している」からではなく、「過去と決別するために行く」からと考える方が巴の心境に近いように思います。
また、懐剣だけを抱えていくという描写にも深い意味が込められています。
「懐剣」=女性の誇りを守るための武器です。
日記に「お守り致す所存にて候」とあったように、巴は決して弱い気持ちで辰巳のもとへ向かったのではありません。
命を賭してでも剣心を守る。そんな強い気持ちでひとり御堂に向かいます。
【完全解説】るろうに剣心 最終章 The Beginning【5】禁門の変(長州の都落ち)参照
全てを知った剣心の “衣裳は黒”
目を覚ました剣心は、巴の姿を捜します。
しかし、そこへやってきたのは飯塚でした。
日記を読んだ剣心は、全てを理解します。